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[学部教育]


医学部医学科専門課程のうち、第3学年前期に開講される再生医学講義、第3学年後期に開講される先端医科学講義および再生医学実習を担当しています。その他、第1学年の「医学・生命科学入門」講義、「早期体験学習」体験交流会、第3学年の「医学英語」、第4学年の「少人数能動学習」などを担当しています。また、第4学年に行われる「自主研修」では、学生とともに最先端の研究に取り組み、その後研究を継続する学生も多数います。また、研究医コースに所属する学生を積極的に受け入れ、学部のうちに素晴らしい研究成果をあげる学生もいます。

 

【再生医学講義(第3学年前期) 担当:◎小島、寺島、樫】

 

学習目標

再生医学は医学の様々な領域において新たな分野を切り開きつつある。特に、幹細胞ならびにそれを用いて作成した組織や臓器の移植、ウイルスや人工ベクターを用いた遺伝子治療、疾患iPS細胞を用いた病態解明は、まさにこれまで不可能とされてきた常識に挑戦するものである。この新しい医学の手法は、今始まったばかりではあるが、ゲノム研究の急速は発展に裏付けられ、臨床応用をしっかりと見据えた形で発展してゆくものと考えられている。諸君はすでに解剖学、生化学、生理学を通してヒトの生命活動の基盤となる重要なメカニズムを学んだ。この講義では、動物実験や先駆的な臨床研究で得られた知識を元に、ヒトゲノム情報ネットワークと最先端のナノテクノロジーを融合させ、これからの医療の理想の形をいっしょに考えていく。従って、治療不可能とされてきた様々な疾患に正面から取り組み、新規治療を開発しようとする最先端医学の凄まじさの行き着く先をしっかり見つめて欲しい。また、今日では原発事故の教訓や放射線医療機器の進歩から、人体への放射線影響に関する知識の必要性が再認識されている。放射線が遺伝子に与える障害とその対策を中心に医師として必要な放射線の影響についても講義する。これらの経験は、必ずや諸君が医師あるいは研究者として大きく羽ばたくための力強い助けとなり、未来医療への新たな扉を開くきっかけになると確信している。

 

授業概要

再生医学について最新の研究成果を含めて解説する。内容を大きく、幹細胞生物学、遺伝子治療、臓器再生の3つに分類する。また、再生医療とともに行われる最新の放射線を用いた診断ならびに治療についてもゲノムへの影響を中心に解説する。

 

授業内容

<幹細胞生物学>

①臓器幹細胞:
体内にある様々な体性幹細胞ならびに前駆細胞の解剖学的な特徴とその働きについて解説する。また、体性幹細胞を用いた実際の治療についても例を挙げ説明する。

②ES細胞、iPS細胞:
ES細胞ならびにiPS細胞の作成方法ならびに診断治療における利用法について解説する。また、生体内に存在し、万能性を持つとされる体細胞成分についても解説する。

③疾患と幹細胞:
ガン、生活習慣病、難治性慢性疾患の原因として、幹細胞の異常を中心に解説し、新しい治療法として開発中の幹細胞治療について考察する。

 

<遺伝子治療>

①ベクター作成技術:
遺伝子治療に使用するウイルスベクターならびに人工ベクターの作製方法について解説する。また、実際に疾患の治療に使用する場合の特徴と注意点について説明する。

②遺伝子治療の臨床:
現在行われている様々な遺伝子治療について例を挙げ、その方法ならびに効果を解説する。特に、治療遺伝子ならびにベクターの選択について解説する。

③標的化遺伝子輸送:
ファージのバイオパンニングを中心に、様々な標的化シグナルの採取原理を学び、それを利用した臓器特異的な分子輸送、及び画像化について考える。また、ゲノム創薬についても標的化とそれを利用した薬物輸送(drug delivery system: DDS)について解説する。

 

<臓器再生>

①in vitro器官再生:
ES細胞やiPS細胞を用いて、in vitroにて器官あるいは臓器前駆細胞を誘導し、それを用いた診断ならびに治療について解説する。特に、臓器の形態学的な特徴を再現させるためにはscaffoldの作成が重要でその点についても考察する。

②in vivo臓器再生:
体性幹細胞を標的として臓器の再生を誘導する遺伝子治療、あるいはES細胞やiPS細胞を使用してそれを体内で組織や臓器へと分化誘導する治療法について解説する。

③胚盤胞補完:
臓器再生の方法の一つとして動物とヒトのキメラをつくり、動物体内でヒトの臓器を作成し、それをヒトへ移植しようというものである。ここでは動物モデルを用いたキメラの作成について解説し、ヒト幹細胞を用いて研究を進める上での法律的ならびに倫理的な側面からも考察を深める。

 

<ゲノム放射線医学>

①放射線の種類と性質:
様々な種類の自然放射線と人工放射線の性質について解説し、医療への利用法について考察する。特に、先端医療機器で使用する放射線の特異性について理解を深める。

②放射線とゲノム:
放射線による細胞死の特徴とそれを用いたガンの放射線治療の有用性を解説する。また、同時に、放射線は正常細胞のゲノムを傷害する。いかにしてそれを最小限に抑え、治療効果を高めるかについて考察を深める。

③放射線診断:
PET始めとする様々な核医学技術を利用したイメージングプローベの開発は診断能力を飛躍的に改善させている。再生医療やその他の先端医療との組み合わせることにより、どのような診断が可能となっているのか最先端を考える。

④放射線治療:
放射線治療はガン治療の重要な手段の一つに挙げられる。近年、サイバーナイフを代表とする先端治療が急速に普及し、放射線による副作用を最小限にして、かつ、生存率を飛躍的に向上させている。治療に用いられる放射線の生物効果を考慮した治療法ついて解説する。

 

【先端医科学講義(第3学年前期)担当:◎寺島、小島、樫、岡野、学外講師】

 

学習目標

基礎研究を臨床医療に活用するための橋渡し研究であるトランスレーショナル・リサーチ(translational research: TR)を推進するために基本となる考え方を学ぶ。

 

授業概要

人類は病気の苦痛から逃れるために、医療行為を行う。この歴史はたいへん古く、薬草などを用いたものだけでなく、呪術、祈祷、占いなど、初期文明と共に生まれたシャーマニズムもこれに含まれる。古い時代の医療行為は苦痛の軽減と除去を目的とするものであり、必ずしも病気との因果関係が明確ではない。それらが科学に裏づけられ、解剖学や生理学などの医学として体系化されることにより考え方が確立されてきた。しだいに文明が進歩するにつれ、大変な被害をもたらす伝染病に対しては、どのようにそれを防ぎ治療するかを研究することから、細菌学や免疫学が誕生した。また、食物の摂取不良や偏った摂取は栄養障害を作り出す。それを防ぐには体にどのような栄養素が必要なのか、またそれらはどのように代謝されるのかを研究することにより、生化学や内分泌学が生まれた。

また、医療以外の分野の発展も、医療行為の進歩を大いに加速させた。特にX線は飛躍的な診断能力の進展を促した。また、細菌の研究の中から、抗生物質の存在が見出され、感染症分野における目覚ましい効果を及ぼした。また、直接ヒトで実験することが出来ないものは動物実験の重要性が認識され、実証科学として基礎医学の方法論が確立されてきた。

やがて、医療に学問として裏付けがなされ、医学に近づいてきたが、それでも、医療と医学の間には隔たりが残ったままとなり、それはそのまま臨床医学と基礎医学として今日に至ったのである。ところが、分子生物学や遺伝子工学の進歩は遺伝子診断や新しい医薬品開発を通して医学をさらに医療へと近づけてきた。すなわち、分析、診断、治療のすべてを包括する医科学が生まれてきた。現在の医療用機器の目覚ましい進歩はそれをさらに決定的なものとしている。それゆえに、人間の幸福を考える上では、もう一度原点に立ち返り、患者1人ひとりの倫理観や価値観なども受け入れた真の意味での医療を確立する時期に来ている。

先端医科学が取り扱う領域は、疾病の新しい診断や治療法について研究する分野で、生物学、化学、工学などの垣根を越えた医学領域の総合科学と言える。ここでは、TRを推進するために必要な考え方を身につけるために先端医科学を臨床遺伝学、分子イメージング、個別化医療の3つに分類し講義する。また、医療に無くてはならない倫理観や心の大切さについてもいっしょに考えてゆく。

 

授業内容

<臨床遺伝学>

①家系図と遺伝性疾患:
単一遺伝子疾患、ミトコンドリア、多因子遺伝疾患について典型的な疾患例を挙げ遺伝形式と特徴について解説する。

②染色体異常の臨床:
染色体分析の方法について述べ、染色体異常がどのようにして出現するのか、またその異常に伴い出現する様々な疾患によりどのような症状の出現し、その対策についてどう対応するのかに付き解説する。

③遺伝子探索の基礎:
疾患の原因遺伝子、感受性遺伝子の探索方法を、最尤推定法を中心として解説する。

④疾患関連遺伝子の同定:
実際に疾患を有する患者群から得られたDNAを使用してどのように疾患に関連する遺伝子を同定してゆくのか、そのプロセスならびに結果の解釈について学ぶ。

⑤遺伝カウンセリング:
遺伝性疾患を患う患者やその家族に対してどのようにカウンセリングを行ってゆくのか、遺伝子診断の際にどのような点に注意すべきかを事例を提示しながら解説する。

 

<分子イメージング>

①標的化輸送:
ファージのバイオパンニングを中心に、様々な標的化シグナルの採取原理を学び、それを利用した臓器特異的な分子輸送ならびに遺伝子治療への応用について考える。

②イメージングプローベの開発:
先端の画像化技術におけるゲノム情報や分子プローベ作成について学び、それらの臨床的有用性について考える。

③脳機能イメージング:
近年の脳研究は大変急速な進歩を示している。この背景には脳の各部位における動的な機能解析の開発が挙げられる。ここでは脳細胞の機能を反映した画像化技術を中心に解説する。

④見えないものを映し出す:
Two photon顕微鏡、蛍光レーザー顕微鏡、laser microdissection (LCM)、FACScanなどin vitroにおける分析機器の進歩、ならびに蛍光ラベリングは診断学を支える大変重要な分析診断の手段となっている。ここではそれらについて解説する。

 

<個別化医療>

①個別化医療とは:
これまでの医療は疾患分類に対応した診断ならび治療を中心に医療が展開してきた。しかし、ある疾患に罹患した多くの患者に対して同じ治療薬を処方したとしても薬物に対する治療効果や副作用の現れ方は個人個人で大きく異なる。このような個人による反応性を考慮に入れた治療こそが次世代型治療の理想とされている。ここではゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス、エピゲノミクスなどのオミックス解析を駆使して作り上げるprecision medicine(個別化医療)実現化計画について解説する。

②分子標的薬と個別化治療:
抗体薬物やゲノム創薬、がんの個別化治療の最先端について解説する。

③食欲・ストレスの次世代型診療:
肥満、やせ、ストレスは人類にとって、存続の危機を招く重大な疾患と言える。このメカニズムと対策を考える。

④次世代型医療システム:
IT化が世界中で進む中、医療情報やゲノム情報についても包括的に情報端末で管理するシステムが構築されつつある。本講義では、世界的視野にたって欧米諸国の最新システムを紹介しながら、近未来に現医学生が直面するだろう次世代型医療システムのあるべき姿を現在の開発状況と比較しながらディスカッションする。

 

【再生医学実習(第3学年後期)担当:スタッフ全員】

再生医学は医学のあらゆる領域において新たな分野を切り開きつつある。特に、幹細胞ならびに骨髄由来細胞を応用した細胞移植や再生治療、ウイルスや人工ベクターを用いた遺伝子治療、疾患iPS細胞を用いた病態解明は、まさに不可能に挑戦するものである。この新しい医学の手法はゲノム研究の急速は発展に裏付けられ、しっかりと臨床を見据えたものと成りつつある。この実習では骨髄由来細胞の性質と病態におけるその変化を知ることにより、骨髄由来細胞が潜在的に持つ役割について理解を深める。

動物を用いて骨髄由来細胞における遺伝子の発現ならびに疾患による影響を学ぶ。
また、実験結果をどのように解釈し、考察するかを実際に行い、グループごとの結果の発表および全体討議も行う。

実際に研究動物より臓器ならびに組織を取り出し、遺伝子解析および組織学的解析を行う。

 

[大学院教育]


医学部医学科博士課程の大学院生を常時数名ずつ受け入れ、研究計画の立案、研究手技、結果のまとめ、論文作成に渡り、医学博士号取得のために必須の内容を丁寧に指導している。週一回の全体研究カンファレンス、個別の小人数カンファレンスを行うことにより、日々の研究遂行上の問題点や疑問点を早急に討議、解決を心掛けている。また、その他、研究成果の学内発表会、学外の学会発表など、積極的に支援および指導し、研究者および医療人として備えているべき、プレゼンテーションスキルの向上も図っている。研究内容は、最先端の研究を取り入れ、できるだけ大学院生の専門や興味のある分野に沿ったものとし、博士号取得後に継続して研究を行えるような道筋づくりを行っている。

本講座では、研究を通じて、新しいことを発見する難しさと研究の楽しさ、充実感といった研究の醍醐味を味わってもらえると確信している。