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  • 糖尿病の皮膚障害の解析

    糖尿病患者さんのキズはなぜ治りにくいのでしょうか?

    不幸にして糖尿病性難治性潰瘍により足肢(趾)切断に至る患者さんがおられます。外傷性を除くと疾患別では一番多いのが、糖尿病が原因の足肢(趾)切断です。「糖尿病の人はキズが治りにくい」のは、広く知られている事実ですが、ではなぜ治りにくいのでしょうか?「血流が悪いから」「免疫力が低下しているから」と世間では言われていますが、皮膚に限って考えると「血流」は皮膚に分布する毛細血管であり、「免疫力」は、皮膚に分布する抗原提示細胞やT細胞、B細胞を指すかと考えられます。

    しかし皮膚の表面に位置する表皮は、その90%以上が表皮細胞から構成されています。当然、「キズ」はその表皮細胞がダメージを受けることを意味します。高血糖は、表皮細胞にどう影響を及ぼすのかはあまり判っていません。

    私たちは高血糖が表皮細胞のホメオスタシスに影響して病態変化を引き起こしていることをマウスを用いて実証しました。つまり、糖尿病の皮膚の変化は創を生じる前からすでに起こっているので、創が生じた後の創傷治癒が正常な人より遅いのはもっともなことになります。皮膚の重要な機能はバリア機能です。糖尿病マウスのバリアを可視化すると、角化層に「穴」があることが判りました(図1)。

    糖尿病患者さんでは皮膚真菌症罹患率が高いことが知られていますが、興味深い事に糖尿病マウスで観察された角化層の「穴」は、真菌の菌糸と類似の大きさでした。これは糖尿病の皮膚が、健常人の皮膚より真菌繁殖に適した「場」を提供している可能性を示唆します。

    このように臨床で良く遭遇する疾患を基礎医学の立場から一つずつ積み上げて、病態メカニズムを明らかにし、その知見を元に効率的な治療法を探索したいと考えています。

  • 論文

    Okano J, Kojima H, Katagi M, Nakagawa T, Nakae Y, Terashima T, Kurakane T, Kubota M, Maegawa H, Udagawa J.
    Hyperglycemia Induces Skin Barrier Dysfunctions with Impairment of Epidermal Integrity in Non-Wounded Skin of Type 1 Diabetic
    Mice. PLoS One. 11(11):e0166215, 2016.