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  • 表皮に遊走する骨髄細胞の役割の解明

    標的臓器研究からの逸脱:各臓器を一個体として統合しているものは何か?

    診療科は、食道、胃等を標的とする「上部消化管外科」や皮膚を標的とする「皮膚科」といったように標的臓器を掲げた科が多くを占めます。各臓器はその独自性が際立ち、多くの専門知識を必要とするので、研究を行う際には自分の標的臓器に没頭することになります。しかし診療科の例で言えば、人間が勝手に臓器を治療の具合の良いように分けているだけであり、臓器を治療することは人間を治療することです。この考えを研究分野で発展させると、標的臓器の研究のみで解決できない問題を、臓器を自由に行き来するシステムで説明できないでしょうか。即ち、そのシステムこそが一個体としてホメオスタシスを維持していると考える事ができます。

    私たちは皮膚を標的臓器として、刺激が加わった際にホメオスタシスを維持するための機構を解析しています。具体的には骨髄細胞を可視化した骨髄移植マウスを作製するためには、10グレイという高線量を必要とします。培養表皮細胞に同線量を照射すると殆ど死滅してしまうのに、マウスが元気に生きているのはなぜでしょうか。

    私たちは、骨髄移植マウスの皮膚に少数の骨髄細胞が遊走するのを見出しました。従来皮膚においては、同様なモデルを用いた報告では少数の骨髄由来の表皮細胞が遊走する、あるいは他臓器では樹状細胞が遊走するものの、表皮は例外であり、骨髄由来樹状細胞は遊走しない、と報告がまちまちでしたが、私たちは実験方法を再検討することにより、骨髄細胞は放射線照射によって表皮-真皮接合部に遊走することを実証しました(図2)。

    この細胞は、放射線に曝露された表皮に欠かせない働きをしていることが、その後の研究から明らかになってきています。さらに、この細胞は体内を自由に行き来できることから、その機能についても解析を行っています。

  • 論文

    Okano J, Kojima H, Katagi M, Nakae Y, Terashima T, Nakagawa T, Kurakane T, Okamoto N, Morohashi K, Maegawa H, Udagawa J.
    Epidermis-dermis junction as a novel location for bone marrow-derived cells to reside in response to ionizing radiation. Biochem Biophys Res Commun. 461: 695, 2015.